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2024.07.16

印章業界の企業診断実施

 60 印章業界の企業診断実施

昭和四十八年のオイルショック、昭和五十三年の円高は、わが国意戦後いま だかつてない、経済的な衝撃を与えた。また、わが国のワシントン条約締結国参 加は、それに拍車をかけ、山梨の印章業界にも大きな不況をもたらし諸問題を 提起することとなった。 業界はそれに対応するため、また、山梨県の地場産業振興対策として、山梨 県連は昭和五十五年、「活路開拓調査指導事業活動」を開始した。 まずこの 事業の一環として、業界各社の「企業診断を」実施することにした。これは従に 会員の約四百名が参加、独自に勧めたもので、その診断結果報告は、勧告会 のかたちで会員に発表された。そしてこの事業は、各組合員のご理解とご協力 により、順調に推進を見ることができた。 この事業は、国・県及び中小企業団体中央会の指導と助成のもとに行われ、 山梨県の地場産業振興策の一つでもあった。これは印章業界の中小企業者の 経済的・技術的環境の現状を分析は把握し、当該事業の今後に対応する活路 開拓を図るための調査・研究及び指導を図るものであった。 また、この事業の成果を新たなビジョンに作成し、これが実現化のため鋭意努 力を重ね、中小企業の発展と組合組織の強化を推進することが目的であった。 主催、山梨県印章業活路開拓調査指導事業推進委員会 指導協力機関 山梨県商工労働部 商工企画課 山梨県商工労働部 地場産業振興課 山梨県中小企業団体中央会 専門委員 中小企業診断士 今村義男 山梨県印章組合連合会顧問 内藤香石 中央技能検定委員 平岩守胤 推進委員 委員長 七沢公教 委員 遠藤悳 樋口泰男 有野正次 小林信義 茂手木勇 谷川正夫 原田保 天野一政 小田切賢二 望月広行 中野智 土橋武雄 遠藤義良 笠井富雄遠藤秀夫 河口賢二郎 上野芳清 遠藤慧 事務局 山梨県印判用品卸商工業協同組合 一瀬新蔵 山梨県印章ケース製造協同組合 花輪芳明 山梨県印判用品卸商工業共同組合、及び山梨印章ケース製造協同組合が 関係当局より選定を受け、本事業の申請母体となり、県連任意組合十団体と智 61 に構成され全面的に協力したものである。 ◎テーマ「八十年代における印章山地のあり方」 (1) 販路開拓に伴う県内外の消費者アンケート収集 (2) 研究事業 (イ) 産地組織の強化 (ロ) 新製品の開発 (ハ) 印章技術の確立 (3) ビジョンの作成 (4) 講習会の開催 印章業ビジョン設定 一 販売促進について(需要開拓) (イ) 今回の拡販資料としてのアンケート調査をきそとしてP・R活動を積極 的に推進する。 (ロ) 最近ギフト面でも大変利用される商品になってきているので、販売方式 の開発研究をすすめる。 (ハ) 取次販売店(チェーンストアー)の募集をする。これは支店とか単位店 ではなく小規模方法にて多数募集が業界としては有望と思う。 ただし全国業者の反発を受けない方法ととる。 二 新製品開発 (イ) 印材に魅力的な側款等はどうか たとえば刻者名、注文主が好む訓語、七転八起、積少致大(今は積 少似大)等その他守り本尊とか数あると思う。 (ロ) 商品全般にわたってイメージアップを図る。 印材の形状等にも一工夫したい。 (ハ) 印材に密刻等は機械化できると思う。 (ニ) 雅印、落款、趣味印に意を注ぐ。 三 新技術の開拓 (イ) 技術面は日進月歩でありかつ限界がない、需要者に好まれるよ うな文字の工夫が必要である。 まるで読めないような文字は客離れの原因になる。 (ロ) グループによる定期健診と優秀作品の褒章制も取り入れたい。 悪かろう安かろうでは業界の破滅を招く。 (ハ) 印章ケース・包装等にも趣向をもって高級商品かを図る。 四 組織の改革 62 (イ) 勧告書にあるような組織の改革を理想として研究推進する。 (ロ) 県連合同会の事務所も設置する必要がある。併せて専従職員を置く。 進歩策に費用を恐れていたのでは発展策は望めない。 (ハ) 印章会館の設置も一歩踏み出す必要がある。 五 印材確保 (イ) 企業は人間が行うものである。 従ってそれぞれの分野で活躍する人材が必要である。 技術開発要員。優れた販売員。品質管理者。後継者育成等。 ◎ すべてやる気を起こさなければ何もできない。 山梨県印章業活路開拓調査指導事業推進委員会 昭和57年度アンケート(消費者動向)による調査の主たる項目を記す。 (1) 所有状況について 実印、認印ともに所有している 80%以上を占めているが、回答なしが 10% ~18%である。これを不明とした。 実印、銀行印、認印などを使い分けているかの設問に対しては、使い分けて いるが98%であり、目的別にかなり明確にされていると思われる。 (2) 所有している場合の材質 63 (3) 所有本数 夫婦でそれぞれ1本ずつとか、成人が家族内にいる場合を考えても平均1、 2 本となったと分析されており、1 世帯で2 本は全体の10%にすぎない。わ が国の夫婦間の所有財産状況の縮図とは言いすぎかもしれないが、一断面 をのぞかせてくれる。 調査のかんあんで1人平均2ないし8本の所有数になる。わが国の総世帯 数は約 3,598 世帯(S55、国税調査)であるので、単純計算で1 億本の認印 が現在家庭にあることになる。 山梨けんでは約22万 8千世帯なので、約64万本となるのである。世帯の 増加率の見込みは年 1.65%程度なので、約 60 万世帯が増加する可能性 があり、毎年170万本の自然増加が見込まれる。 (4) 購入の動機(実印、認印とも) 新たに必要が生じたからが66.3%(実印)。47.5%(認印)となっている。必要 性が主力であることがわかる。 (1) 実印については証明機能を中心に考えている人の割合は80%で、宗教、 心理、芸術性等も考えている人も20%近くいると推定された。 (5) 購入店 64 実印は専門店という慣習性が見られる。財産その他自己の利害に深く関係 する証明については確実なことを考えるわけであるが、これが専門店と結び ついている面がある。従って専門店のPRの主眼は安全性、確実性によるこ とが有効であろう。 両方を通じて訪問・通信販売の割合の多いところに着目すべきである。実印 で 21.4%認印で 23.1%を占めている、流通革新、小売技術革新の大きな波 の中で、消費者の購買行動、価値観、習慣等の変化に小売技術の認識が 強まっている。 (6) 購入店選択の理由 (7) 購入する場合の予算 65 (8) 印相印について 書体、価格、人間心理、世相等々の要素を組み合わせ、特色を作り出して 販売して行くのも一つの例として印相印が存在すると考えていくと、要素の 多様化、個性化、ファッション化の対応具体例として印相印がヒントを与えて くれているものではないかと考える。 (9) 山梨から購入した事があるか (10) 山梨の印章についてのイメージは 66 イメージの確立は、現代社会において商品販売の最大の柱となっている。 この事を念頭において印章発展の方向をきめる場合のキメ手となる。 今後の展望 一 量から質の時代への対応 総理府の統計調査、意識調査等の資料を見ても、あるいは実際の人々の生 活状況、また者は豊富にあり色々の品物が売られている状況をみても、国民の 生活は豊かになったという実感がする。消費不況といわれても、物の不足してい る状態の時と、ある意味では、行き渡っている状態のときとでは様相が全く異な るはずである。前年同月比何%という伸び率の数字が低くなってくると、伸び悩 み、あるいは不振と言われる。 これからの時代は、同じ品物が何年も続いて売れるということは困難になるで あろう。例えば衣服の伸び率三%という数字があっても内部的には、婦人物紳 士物等々とわかれ一方が伸びて、一方が減少ということがあり、さらに婦人物の 中で、スーツが減少、ワンピースが上昇等々、さらにワンピースの中でも、若年 層のものは上昇という具合、最終時には、ここの商品の伸び、減少の結果として 三%となったのであり、ここの商品のデザイン、色彩、素材等々の変化の結果と して三%となったのであり、個々の商品のデザイン、色彩、素材等々の変化の結 果なのである。この「自明の理」を素直に受け入れて再検討していく心構えが必 要である。商品の種類、数の不足している時代の感覚から、商品がゆきわたっ て消費者自身、何が本当にほしいのかわからなくなる時代の感覚に目を転じて いかなければなるまい。 賞資源、省エネルギーと言っても、「つつましく最低生活で」と言う考え方は、現 代においては、中々困難となっている。消費水準、生準を落とす生活に切り替え ることは、現在の社会経済的環境と人々の生活意識の本では、極めて難しい。 従って量ではなく質豊かにと言う発送につながるし、また人間の欲求の発展のス テップからみても、そのほうが抵抗が少ない。このような時代になっているという 認識が業界にとって大切である。 印章はわれわれの日常生活において、必要なものである。「サイン」とか「カード」 で処理できる時代が到来すれば話は別である。ところで、原則的には印章は必 要と思われる個数以上は、持つ必然性がない。必要と思われる個数を大きくす るにはいかになすべきかが問題であろう。かりに業界の認識として、消費者は実 印と認印、銀行員の三種であると考えても、消費者が、印章の材質と印章技術 に価値を見出して、より上質のもの、より技術の秀でたものを次々と買ってくれる かもしれないし、印章は一個だけで良いとする価値観をもっていれば、それだけ 67 しか売れないことになる。すなわち消費者が、印章の「何に」価値を見出している のか、この事を把握することが根本的な需要開拓の問題点である。 現代において消費者の真の需要を見つけ出すことは大変困難になってきてい る。このことを消費の多様化とか個性化という表現で表しているようだが、供給 する側に立てば、これは難しい対応を迫られる問題であろう。このような状況の 中で業界は今後どのような対応をしていくべきか業界全体が組織的に総力を結 集し対応策を具現化し実現していくことが要請される。 ニ 需要開拓への対応 (一)商品のイメージアップをはかる 心を豊かにする商品づくりが必要である。商品は機能(役割)が中心となって購 入されていくものである。しかし消費者が機能以外に、たとえば、ファッション性、 文化性、個性化などの感覚的な欲求を持ち、それを具現化した商品を望んでい るとすれば単に機能だけの商品は売れない。より秀れた機能を持たせるか、消 費者の求めるプラスアルファを付加するか、何等かの方法を考えて対応してい かない限り商品というものは、いつの間にか、イメージとして「いつでも買える」 「必要になったら買えばよい」ということになりやすいものである。 万年筆は筆記用具である。現在、小売店で売られている万年筆は「どう」なって いるのであろうか。その経過をみると、二極分化の方向に進んでいるようである。 すなわち機能に徹して良い質で安値なものと、高級イメージ、文化的イメージを 豊富に感じさせる高価のものと、二極に遂次わかれていきつつある。 印章においても、単に証明機能に徹するだけでは売り上げには限度があろう。 質の良い材料、優れた印刻技術により、人々に、「高級イメージ、文化的イメー ジ、を与えるような型、色、書体、印章ケースを含む全体の何か」を具現化した 商品としての印章を作り上げていくことが要請されよう。消費者の選択眼は、より 研ぎ澄まされている時代である。暮らしを豊かにさせてくれるもの、文化的なもの、 心を豊かにさせる商品が人々の心を捉えていく時代であるという認識が必要で ある。 (ニ)業態の多様化を研究する 業態というのは経営の方法ともいえよう。販売方法、品揃え、陳列の方法、店 舗、売り方、接客方法等々、販売に関する要素を以下に組み合わせて一つのま とまったものとして消費者に提示する経営の方法と考えられる。例えば百貨店、 スーパー、専門店ディスカウントストア、通信販売等々は業態である。この意味 では当業界はパイオニア的存在といえよう。通信販売、訪問販売、一般小売店、 専門店等々と多くの経験を持っている。 業態は経営の方法でもあるので、経営者の革新的な創造的な考え方により、 68 幾種類でもつくり出すことは可能である。しかし、定着し、業態として確固たる地 位を築くには社会的経済的事情と消費者の意識という条件が、うまく合致しない と存続は出来ない。現代は業態開発競争の時代とも言われている。消費者の 需要にいかに対応するか、そのためには業態は如何あるべきかについての研究 と実現に「力」を結集している時代でもある。当業界においても流通問題に対処 するには業態を検討していくことが要請されよう。 例えば一つの考え方として、取次販売店(チェーン店)を全国的に展開すること なども考えられる。ある意が全国をブロック別に区分し、ブロックごとの取次店の 総括店を設置しコンピューター集計をして生産手配をし、商品を消費者の手許 に配送するはど色々の方法が考えられるであろう。また既存の専門店において は、店としてのイメージをどのように高めていき消費者の需要に対していくか、店 舗、店舗内容、陳列、接客技術等々の研究、改善が一層必要とされる。 (三)技術の開発と向上をはかる 商品のイメージを高め、消費者により適切な業態を提示して販売していくため には、それらの裏付けとなる商品そのものが価値を持たないと実現は出来ない。 それらの商品をつくろことの出来る技術の確保が必要となる。手作りのすばらし さ、本質的なものを表現するには、それなりの練磨と研究とが必要とされよう。そ の意味においても印刻技術者の一層の質的向上を目指して、例えばグループ による定期研修、あるいは優秀作品、優秀技術者の表彰、さらにそれらのPRを 十分にしていくことなどが大切である。一方、機能に徹する質の良い安価な商品 を作るには、「手」でなくてもすむ工程については極力近代的な機械設備を活用 していくことが必要である。このような合理的志向を持って、技術開発あるいは 技術向上を、商品の価値付けと連動させていかないと消費者の需要には対応し がたい時代となっていることを知るべきである。 (四)人材の養成と組織を強固にする 社会は人々の存在によって成立するものであり、業界も、それらの各種の仕事 に、たずさわる人々の存在と、その業界の必要性を認める消費者の存在によっ て成立する。極めて当然の事柄であるが、この考え方を基本に持てば、業界を 支えるそれぞれの分野で活躍する人々を多く養成することが大切なことになる。 人材養成と確保がもんだいとなろう。技術開発をする人、技術を高度に習熟す る人、優秀な販売技術を持つ人、品質管理が出来る人々等々多くの人材が必 要とされる。 このような問題について業界が組織的に、計画的に実現を図る方策を見つけ 出すことが必要となり、総力を結集するには、業界組織を一段と強力なものにす ることが要請される。生産と流通を統合できる組織の拡充と、一層のコミュニケ 69 ーションの充実、さらに財政確立のための基金の積立て、確保等の長期的基点 を持った計画を樹立して実行していくことが要請される次第である。

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